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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

07 第七分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页

青空文庫

決して、あなたの御使命を為損じるようなことはせぬ」

こう囁くと、美濃部十郎や柘植半之丞の輩は、仲間だけで、野鼠のように、壕の底を走り去った。そして北之門から百間ほど先に、やや塀の低いところを見つけて、そこから城内へ忍びこむつもりらしく、一かたまりになって、前後を窺っていた。

すると、虎之助は、家来の者の肩車に乗って、壕の上へ這い上がった。つづいて二、三名が、彼と共に上がって来る。

壕の上で、また人間の踏み台を作った。ひとりが這う。ひとりがその背中へ乗る。その肩の上に虎之助が立つ。

手が、塀の上にとどくと、虎之助は身を弾ませて、家来の肩から離れた。すぐひとりが下から片鎌の槍をその手へ渡す。

虎之助は、槍を左の小脇に持ちかえた。そして城内を望みながら、

「冠山の城へ、一番に乗り入る者。羽柴筑前守の小姓、加藤虎之助清正ッ」

と、大音にどなった。

姿はとたんに城内に跳びこんでいる。不意をくったのは搦手の城兵だったことはいうまでもないが、むしろより以上あわてたのは彼方の塀の下に寄って、草のそよぎにも神経をつかっていた伊賀、甲賀の仲間だった。

「あッ。無茶なッ」