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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

07 第七分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页

青空文庫

「元祐の邸へ行け。ともあれ、押しかけて、彼らの本心をたたいてみれば顔色でも知れる」

景親の郎党たちは、集結して、上原の住居へ殺到した。

夜来の騒動を、同じ城内にいながら、軍監たる上原元祐が知らないはずはない。にもかかわらず、元祐はゆうべから誰にも顔を見せていない。

「元祐を出せ」

「元祐に会おう」

日幡の郎党は、門を囲んで、怒号し合った。

「出ぬからには、やましい覚えがあるのであろう。われら長年の主人をうしない、しかも城下に大軍の敵を持ち、やり方もない鬱憤をもってこれへ参ったもの。押し入って元祐の首を挙げるがいいか」

邸内にも、上原の郎党がひしめいている。何事か凝議している動揺が感じられる。するとやがて、家来に門をひらかせて、静かに立ちあらわれた女性がある。

「しずまりなさい。城外の寄手に覚られたら何としますか」

上原元祐の妻である。手に薙刀をかかえていた。

元祐の妻としては、反感をいだいている日幡の郎党も、この婦人が、毛利元就の血をうけた妾腹の子であることは知っている。その点において、この女性の一声は、彼らの怒りを一時にせよ宥めるに効があった。

「夜来の変には、女であるわたくしとて、共々、胸をいためているところです。