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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
07 第七分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页
「事態いよいよ急。一刻もはやく御援軍を」
と、飛書、早馬、相継ぐ急使をもって、訴えられたこともちろんであるが、いかんせん、事情は急速に毛利の軍勢をして、ここへ反転進出してくるのをゆるさなかった。
なぜならば、小早川隆景は、筑前の立花や豊後の大友宗麟などと交戦中であった。吉川元春は、鳥取城を中心とする敵勢力の山陰展開にたいしその処置に忙殺されていた。また、主将毛利輝元にしても、こう両翼の一致と、対秀吉軍の大方針が決せぬうちは、その本国吉田山の城をめったに揺るぎ出ることも当然ならない。
輝元を中心に、その両川の意見が一致し、毛利家はじまって以来の、大戦端を予測しながら、全軍四万が方向を転じて、この備中の境へ出てくるまでには、どうしてもなお半月以上の日数はかかる。
「極力いそぐ。かならず大軍をもって援軍に赴く。ただ問題はそれまでの防ぎだ。頑張りだ。高松の一城だに頑としておれば、敵は芸州へ一歩も入ることはできぬ。――清水宗治以下の一心一致をくれぐれ頼みまいらすぞ」
輝元の側近は、輝元のことばとして、度々の使者にこう答えた。激励した。またその一線の任と籠城の意義がいかに大きく重いかを説いて、声援鞭撻、怠りもなかった。