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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

07 第七分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页

青空文庫

(先輩とて、あまりに、今の若い者などと、大口はきくまじきものなり)

という戒めを、事実をもって、目に見せてくれねばならんと、誓っているのだった。

「お小姓衆」

坊主あたまが一つ、けむたそうに煙の中に畏まった。茶道衆のひとりである。市松がふりむいて、

「おい。なんじゃ」

と、無頼漢のような口のききかたをした。

「殿のおことばです」

そう聞くと、若者たちは、みな具足の着込みであったが、一斉に坐り直して、もう戯れ口もひそめてしまった。

「――黒田様とおはなし中、しばらく小姓溜りの方へ、退っておるようにとの仰せです。何か大事なおはなしがおありらしく……」

「むずかしかろうか」

と、秀吉。

「むずかしいと思います」

官兵衛はいう。

沈黙がつづくと、ふたりのあいだには、粗雑な陣中の仮普請のため、廂からあふれ落ちる五月雨の音のみが蕭条と耳につく。

「要は、日数の問題でしょう。二回の総攻撃を試みて、およその短期力攻の至難なことは知れました。さらば、長陣を覚悟し、悠々、包囲するとしますか、それにも必然、大きな危険が予測される。――毛利方四万という本国勢の急援が間に合って、高松城と聯絡をとり、呼応してお味方へ攻勢を展開してくるおそれのあることです」