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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
07 第七分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页
準備として、秀吉はまず、そこへ本陣を移した。五月七日のことである。
翌八日。
「縄取始めをする。九右衛門も来い。六郎太夫もつづけ」
と、秀吉は幕僚、六、七騎をつれて山を降り、はるか高松城の西――その城を右手にのぞみながら、足守川の門前とよぶ地点まで遠乗りした。一汗ぬぐって、
「九右衛門」
と、よび、
「石井山の山鼻から、この門前までの距離は」
「一里足らず。くわしく申し上げれば、二十八町余にござります」
「そちの図面をかせ」
千原九右衛門の手からそれを取って、築堤の工事と、四方の地勢とを見くらべる。
ここに佇って観ると。
西は、吉備から足守川の上流の山地へ、北は龍王山から岡山境の山々まで。そして、東は石井山、蛙ヶ鼻の山端れにわたって――実に南の一方をのぞくほかは、ふところ深い天然の湾形をなしている。
その平野の湾のまん中にぽつねんと高松の城は、平城式構築を示している。
秀吉の眼には、その平地の畑も田圃も馬場も人家も、すでに悉く水面に見えていた。かかる眼で観るとき三方の山岸は、曲線の多い磯や岬とながめられるし、高松城はまさに人工的な一孤島ということができる。