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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
07 第七分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页
――人々は初めて地形の認識をよび起され、この備前、備中の境あたりも、遠い太古のむかしには、やはり海だったのではなかろうかなどと急に考え出した。
戦闘は開始された。血の戦いではない。土とのたたかいである。
築堤の長さは。
二十八町二十間という距離。
また、堤の幅は。
上で六間。下の地面部はその倍の十二間という厚さ。
問題は、高さである。この高さは水攻めとする対象の高松城と比例せねばならない。実に、水攻めの成功を確信し得る素因は、なによりもその高松城が平城式なる上に、石垣もわずか二間しかないところにあった。
で、築堤の厚みも、その高さ四間という基本から割り出したのである。――四間の高さいっぱいに水をみなぎらせれば、城の石垣を浸して、なお二間の水嵩を、城廓のうちへ氾濫せしめることができるという計算になる。
が、土木というものは、いつの場合でも、予定日数より早かったという例は稀である。
ここに、黒田官兵衛も、もっとも頭を悩ました問題は、工事にしたがう人力であった。
もちろんその大部分は、土着の農民に求めなければならないが、近郷の部落には、いまやその人口はすこぶる稀薄だった。