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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
07 第七分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页
市松、虎之助のふたりほど伴ったらよかろう。なるべく和やかに扮装って」
「はい」
ふたりは去る。
秀吉もそこを出て、ふたたび奥の雛の間へ帰って来た。
はて、もう誰もいないのか。
と、彼は襖の外であやしんだ。あんなにはしゃいでいた女童たちの声が少しもしない。ひそとして、無人のように感じたからであった。
市松がうしろから手をのばして彼の前の襖を開けた。
見れば、秀家もいる。また秀家の妹も、ほかの女童も侍女たちも、いることはそこにいた。
けれどひどく前とは空気がちがっていた。みな黙りこくって、雛壇の前に坐っている雛の客に眼をすえていた。秀吉の代りとして、そこにいよと命じられた小姓の加藤虎之助は、
(主命もだし難く……)
といわんばかりな顔して、迷惑を怺えながら、厳然と、両手を膝において坐っていた。孤軍の中に、一方の口をひとりで守っているような眼で、侍女や女童たちを睨みすえていた。
膝のまえに、菓子の高坏がおいてあるが、手もふれてない。盃に酒がついであるが、飲みほしてもない。
初めはいろいろ、からかわれたとみえて、頬に白粉をつけられたり、背に紙きれをさげられたりしているが、虎之助は、