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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
「大阪朝日新聞」1924(大正13)年3月~5月<br>「女性」1924(大正13)年11月~1925(大正14)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 179,399 字 · 353 页
十四
―――」
十四
その夜の二人の寝物語は、別にくだくだしく書くまでもありません。ナオミは私から精養軒での話を聞くと、「まあ、失敬な! 何て云う物を知らない奴等だろう!」と口汚く罵って一笑に附してしまいました。要するにまだ世間ではソシアル・ダンスと云うものの意義を諒解していない。男と女が手を組み合って踊りさえすれば、何かその間に良くない関係があるもののように臆測して、直ぐそう云う評判を立てる。新時代の流行に反感を持つ新聞などが、又いい加減な記事を書いては中傷するので、一般の人はダンスと云えば不健全なものだと極めてしまっている。だから私たちは、どうせそのくらいな事は云われる覚悟でいなければならない。―――
「それにあたしは、譲治さんより外の男と二人ッきりで居たことなんか一度もないのよ。―――ねえ、そうじゃなくって?」
ダンスに行く時も私と一緒、内で遊ぶ時も私と一緒、万一私が留守であっても、客は一人と云うことはない。一人で来ても「今日は此方も一人だから」と云えば、大概遠慮して帰ってしまう。彼女の友達にはそんな不作法な男は居ない。―――ナオミはそう云って、
「あたしがいくら我が儘だって、いいことと悪いことぐらいは分っているわよ。