轻松读懂日语经典作品
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
「大阪朝日新聞」1924(大正13)年3月~5月<br>「女性」1924(大正13)年11月~1925(大正14)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 179,399 字 · 353 页
二十三
みんなが慰みものにしている、口には出来ないヒドイ仇名が付いている、―――この恐ろしいスッパ抜きは却って気分をサバサバとさせ、私は瘧が取れたように一時に肩が軽くなって、涙さえ止まってしまいました。
二十三
「どうです河合さん、そう閉じ籠ってばかりいないで、気晴らしに散歩して見ませんか」と、浜田に元気をつけられて、「それではちょっと待って下さい」と、この二日間口も漱がず、髯も剃らずにいた私は、剃刀をあてて、顔を洗って、セイセイとした心持になり、浜田と一緒に戸外へ出たのはかれこれ二時半頃でした。
「こう云う時には、却って郊外を散歩しましょう」と浜田が云うので、私もそれに賛成しましたが、
「それじゃ、此方へ行きましょうか」
と、池上の方へ歩き出したので、私はふいとイヤな気がして立ち止まりました。
「あ、其方はいけない、その方角は鬼門ですよ」
「へえ、どう云う訳で?」
「さっきの話の、曙楼と云う家がその方角にあるんですよ」
「あ、そいつはいけない! じゃあどうしましょう? これからずっと海岸へ出て、川崎の方へ行って見ましょうか」
「ええ、いいでしょう、それなら一番安全です」
すると浜田は、今度はグルリと反対を向いて、停車場の方へ歩き出しましたが、考えて見ると、その方角も満更危険でないことはない。