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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
「大阪朝日新聞」1924(大正13)年3月~5月<br>「女性」1924(大正13)年11月~1925(大正14)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 179,399 字 · 353 页
十五
浜田に熊谷、あとから関や中村も加わって、離れ座敷の八畳の間に六人の主客がチャブ台を囲み、十時頃までしゃべっていました。私も始めは、この連中に今度の宿を荒らされるのは厭でしたが、こうしてたまに会って見れば、彼等の元気な、サッパリとしたこだわりのない、青年らしい肌合が、愉快でないことはありませんでした。ナオミの態度も、人をそらさぬ愛嬌はあって、蓮ッ葉でなく、座興の添え方やもてなし振りは、すっかり理想的でした。
「今夜は非常に面白かったね、あの連中にときどき会うのも悪くはないよ」
私とナオミとは、終列車で帰る彼等を停車場まで送って行って、夏の夜道を手を携えて歩きながら話しました。星のきれいな、海から吹いて来る風の涼しい晩でした。
「そう、そんなに面白かった?」
ナオミも私の機嫌のいいのを喜んでいるような口調でした。そして、ちょっと考えてから云いました。
「あの連中も、よく附き合えばそんなに悪い人たちじゃないのよ」
「ああ、ほんとうに悪い人たちじゃないね」
「だけど、又そのうちに押しかけて来やしないかしら? 関さんは叔父さんの別荘があるから、これからはちょいちょいみんなを連れてやって来るって、云ってたじゃないの」