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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
「大阪朝日新聞」1924(大正13)年3月~5月<br>「女性」1924(大正13)年11月~1925(大正14)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 179,399 字 · 353 页
でない純日本式の、中流の紳士向きの家へ引き移る。今まで使っていた西洋家具を売り払って、総べてを日本風の家具に取り換え、ナオミのために特にピアノを一台買ってやる。こうすれば彼女の音楽の稽古も杉崎女史の出教授を頼めばよいことになり、英語の方もハリソン嬢に出向いて貰って、自然彼女が外出する機会がなくなる。この計画を実行するには纏った金が必要でしたが、それは国もとへそう云ってやり、すっかりお膳立が整うまではナオミに知らせない決心を以て、私は独りで借家捜しや家財道具の見積りなどに苦心していました。
国の方からは取り敢えずこれだけ送ると云って、千五百円の為替が来ました。それから私は女中の世話も頼んでやったのでしたが、「小間使いには大へん都合のいいのがある、内で使っていた仙太郎の娘がお花と云って、今年十五になっているから、あれならお前も気心が分って安心して置けるだろう。飯焚きの方も心あたりを捜しているから、引っ越し先が極まるまでには上京させる」と、為替と同封の母の手でそう云って来ました。
ナオミは私が内々何か企らんでいるのをうすうす感づいていたのでしょうが、「まあ何をするか見ていてやれ」