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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
「大阪朝日新聞」1924(大正13)年3月~5月<br>「女性」1924(大正13)年11月~1925(大正14)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 179,399 字 · 353 页
そうそう、浜田と云う者が居たっけ、己はウッカリ忘れていたが、あの男なら己の味方になってくれよう。己は「松浅」で別れた時にあの男の住所を控えて置いた筈だから、明日にも早速手紙を出すかな。手紙なんかじゃ懊れッたいから電報を打つか? そいつもちょっと大袈裟なようだが、多分電話があるだろうから、電話をかけて来て貰うか? いやいや、来て貰うには及ばないんだ。その暇があったら熊谷の方を探って貰う方がいいんだ。この際何より肝要なのは熊谷の動静を知ることにある。浜田だったら手蔓があるから直きに報告を齎らしてくれよう。目下のところ、己の苦しみを察してくれ、己を救ってくれる者はあの男より外にないんだ。これもやっぱり「苦しい時の神頼み」かも知れないんだが、………
明くる日の朝、私は七時に飛び起きて近所の自動電話へ馳せ附け、電話帳を繰ると、好い塩梅に浜田の家が見つかりました。
「ああ、坊っちゃまでございますか、まだお休みでございますが、………」
女中が出て来てそう云うのを、
「誠に恐れ入りますが、急な用事でございますので、ちょっと何卒お取次を、………」
と、押し返して頼むと、暫く立ってから電話口へ出て来た浜田は、