轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ちじんのあい

痴人の愛

谷崎 潤一郎

「大阪朝日新聞」1924(大正13)年3月~5月<br>「女性」1924(大正13)年11月~1925(大正14)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 179,399 字 · 353 页

青空文庫

私はよく、彼女の芳わしい息の匂を想い出して、虚空に向って口を開け、はッとその辺の空気を吸いました。往来を歩いている時でも、部屋に蟄居している時でも、彼女の唇が恋しくなると、私はいきなり天を仰いで、はッはッとやりました。私の眼には到る所にナオミの紅い唇が見え、そこらじゅうにある空気と云う空気が、みんなナオミのいぶきであるかと思われました。つまりナオミは天地の間に充満して、私を取り巻き、私を苦しめ、私の呻きを聞きながら、それを笑って眺めている悪霊のようなものでした。

「譲治さんはこの頃変よ、少うしどうかしているわよ」

と、ナオミは或る晩やって来て、そう云いました。

「そりゃあどうかしているだろうさ、こんなにお前に懊らされりゃあ、………」

「ふん、………」

「何がふんだい?」

「あたし、約束は厳重に守る積りよ」

「いつまで守る積りなんだい?」

「永久に」

「冗談じゃない、こうしていると己はだんだん気が変になるよ」

「じゃ、いいことを教えて上げるわ、水道の水を頭からザッと打っかけるといいわ」

「おい、ほんとうにお前………」

「又始まった! 譲治さんがそんな眼つきをするから、あたし尚更からかってやりたくなるんだわ。