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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
そのうち、中でも日とともに、最後にどうしてもあきらめ兼ねるものは、今日の日のために多大の金子を投じて求めた食糧であった。
待っていたのは事実である。だが、も一度問いかえされたら、一年の余も経過した今になって、誰が正気で、高倉利吉の調査を期待したというのか? それはみんな、忠実な勘定方であった彼自身のなかにあった観念だ。もう一人の彼が常にきびしく監視していた。その当事者によってなされた仕事が、もしも拙く行ったならば、取りも直さずそのものが屠腹して詫びねばならぬとする道徳でもって。その際方針が間違っていたなぞと考えてはならぬ。仮りにも主君の恣意がそれを強要したなぞとは、それは夢にも現われてならぬ想念であった。生れてはじめて鍬をとった彼らであった。おぼつかない手に痩せ土を掘りかえし、芽生えて来るであろう作物のしなびた葉に驚いた彼らは、ともに前後を錯乱していたのであろう。無為な困憊のなかにいた時、まるで昨日のことででもあったように、それではひとつ調べて参りましょうと云った高倉利吉を、うん、そうだな――と、邦夷をはじめ彼らの家中はうっかり頷いてしまったのである。