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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
むしろ、なにものも介在しない夫と妻の生活が彼女を活気づけていた。ほのかな焚火のあかりにさえ彼女は上気していた。はしたなく直ぐに笑いだしそうであった。そのくせ、物を食う男の口許を母親のように見とれる年齢に達していた。
そのとき阿賀妻の視線の片隅で、別の女は目をぬぐうのであった。彼は箸をおいて妻に話しかけた。
「そうだ、おなごはおなご同士――高倉どのの家内もひどく傷心のように見受けた、行って慰めてあげるがよい、そなたも送ってあげるがよい」
一々その言葉にあいづちを打って、彼の妻は、眼をあげて下座のトキを見やった。
「どうぞ」
「いや、いや、そなたも、さ、お伴するがよかろうと思って」
それは?――と見なおす自分の女のほてったような眼に、男はどぎまぎと下を向いてしまった。女の気持に目をつぶって、弱まる心をおさえつけた。
「すこしこみ入った調べものがあるので」
――実は独りになって考えてみたいのであった。女たちが出て行ったあとの炉ばたで、白い灰をかぶった燠を見ながら彼は凝然としていた。第一は、目下の食糧購入費を得るために、『税庫建築』を請負うこと。第二には、今後の『開墾資金』