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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
問い詰められた彼の返す言葉ははげしい音を立てて飛びださねばならぬ場合である。
「斬って捨てるべきじゃ――いや、少くとも」と阿賀妻は云った、「われもまた兵を備えてじゃね、その赤えびすどもに対抗せずばなりますまい」
「ご同感じゃ」
「そこで、兵部の大丞黒田清隆どのを貴殿がお連れしたというのじゃござらんか、会津の士族が四百戸ほどカラフト移住を願い出たとも聞いておる、つまり、あの人らはあの日から、兵部省の支配のかせを喰わされましたから、のう――ところで、その兵部の大丞どのがまッ先に軟論を唱えられとるとかうけたまわっておりました、が」
「うん、まア、しかし――」と堀は組んでいた腕をほどいた。
彼にとってその言葉ほど重苦しいものはないのだ。武官系で参議級の人物をいただこうと思い、わざわざ指名したその人への要望が、カラフト抛棄論となって酬いられていた。従って、あるいは堀のいら立たしげな強硬論がますます空想を逞しくするのかも知れない。――それは本当に明治の初年であった。新しい政府の政府らしい信用もどうかと思われるとき単身その地に乗りこんだこの血気の男は、ものものしげな衣冠束帯の行列をつくって上陸した岡本権判官の一行を迎えて、何故かその形式に流れた施設のないやり方に納得出来なかったのだ。