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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

もっとも、全く彼がそう云う口調で聞かせたくなる通り、前回の踏査と云えば、それは実に海の底をさぐるように漠然とした頼りない気持であったものだ。しかし今ではちがっている、――おぬし等はただ、大野どのやそれがしに充分信頼して、あたえられた命令を果せばよいのである。

雑木の混った熊笹のやぶを南にまっ直ぐにおりて、そこに流れる最初の谷川にぶっつかれば、即ちシラッカリの沢に辿りついたことである。これが第一の行程であった。小屋係りはその渓流のほとりでとっつきの仕事をはじめねばならない。道路係りはその地点までを幅六尺に刈り分けねばならない。そして運搬係りのものと云えば、彼らは谷間に進められた屯所に向って、草屋根の草いきれもはげしい仮小屋に、器具や材料や、わけても糧食を肩にかついで運ぶのであった。炊事係りは手をひろげてそれを受け取りながら云った。

「そう、そう――腹が減ってはいくさが出来ぬ、ッてな」

配置された部署について――その部署の機能に最善の注意をはらう心構えは、おのずと、戦場にあると同じ緊張をかき立てる。又これこそ彼らの新たな戦場にほかならぬ――と、問わず語りに胸にひびく惻々たるものもあったのだ。