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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

唐突なほど真面目くさっていた。鎮守の小祠である。

「ご老体――」と、邦夷はそれを見てそう云って、めずらしく、うすい唇の隅に微笑を浮べていた。

「はい」ともとの祐筆は鼻ごえをだした。

「よく気がつかれました」

「はい、はア――いや、なに」と彼もふと笑いだした。老人はこのことを忘れたことは無かったのだ。だが、そんな風に云われると、若い、伜のような主君との間にある年齢のひらきに気がつくのだ。

いかにもこれは年寄りじみた考えかも知れない。けれども、この小祠に勧請した六柱の神々こそが、今日の祝宴の正座におかれてこそもっとも相応しいと考えられた。天照皇大神を中心にして、穀菽の守護神である倉稲魂神、林野の守護神である大山祗神、勇武征戦の守護として志波彦大神、建御雷神、経津主神を奉斎したのであった。潰えた家臣の一団が、彼らの決意と信念をこの神々に象徴したというべきであろう。いや、一旦斎いてしまうや否や、神がそこにあって彼らを支配しているのであった。――底には廃仏毀釈の思想も流れていた。革新にむすびついた復古の思想が行きつくところまで行きついて、行きすぎた時代でもあった。