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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
日本海の水が緑を帯びて、日毎に南の風があたたかくなって来た。うっ積していた人々の気持にも季節のめぐみは一脈のやわらぎを伝えるのであった。政府の方針が開拓に向けられてるのであるならば、まだ殆んど手をつけていない濶いこの蝦夷地に、彼らの棲む恰好の土地が無いはずはなかった。蝦夷地を措いて、生きる余地はすべて塞がれた、と、そう、思いつめた彼らだ。
新たな土地を探さなければならない場合であった。
あたかも開拓使長官の一行が巡視して来た。ありのまま見て貰えばよかったのだ。どんな素人にも判然としているわるい土地であった。眉をひそめた彼らは、速やかに肥沃な土地を選定して、至急貸付けを願い出ろと諭した。
――ありがたき仕合せ、と、それを受けた。
愁眉をひらいたのである。思わず頭を低げてしまった。
その様子をじろじろと眺めていたのが玉目三郎であった。
馬に乗って遠ざかる彼ら支配者を海岸路に消えるまで見送った。そして、阿賀妻らがほっと顔をあげたとき、彼の目に映ったのは、ひとり傲然と唇をゆがめているその男であった。彼の肩先がどういう考えを現わしているか、聞いてみるまでもなかった。