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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
踏みまよい拒けられて、オヤフロの野と交わる尾根のふもとを歩かせられた。ここは、二つの地形の岐れ目にあたる。すでにご承知でもあろうが、見らるる通り、これから一気に駈けおりようとするわれらの原野は、三方に山を背負い、南にひらけて際涯ないイシカリの野につづいている。そこでわれらの使命は八分目まで達したというも過言ではない。
「――が」と彼は言葉をきって、燃える焔の白い煙に変るあたりに眼をやった。
樹と樹のあいだに菰を張った即席の屋根から、溜った雨水がごぼりと落ちた。灰かぐらを立て、ひと塊りのおきを黒くした。
焚火のあかりを取って、彼の膝に斜めにひらかれていた地図の上から、彼らは思い思いに顔をあげた。
雨はまだ降りつづいていた。
人夫は枯木を投げ入れた。焔に照らされて、木株に腰をおろした彼らの顔は異様に赤らんでいた。今し方かきこんだ炊きたての飯が、身内を充血させたのかも知れない。悶えるように燃えつづける火を見て、阿賀妻の言葉を待った。
「あとの二分じゃが――」
首で、眼で、顔色で――それぞれに頷くのだ。
「これがまた、なかなか侮りがたい、いや、お聞き下さい、云わば踏査はこれからはじまることになる、随って、今までの道は、踏査のうちでは、まさにその序論と見るが至当でござろう、この意味で、ご推察下さるか、さ、そこで」