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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
、婿となり舅となった現世の縁に因って、ときにはこの老人どものことを思い出さねばなるまい、と」
「わかりました」
「おわかり下さいましたか――さすがは、ご家老、それでは、改めて一献、おや、これは空でござったか」
第二の徳利に手をのばしながら篠崎は云った。
「――老人、そのお流れを頂かして貰おう、――おや、これも空になっとるか、おい」
彼は立ちあがってお燗番を手招ぎした。酔った勢いでやって来て、思いをさらけだして満足して、そこでまた一時に酔いを発した。
「さすがはご家老――」と彼は舌なめずりして相手の肩をたたいた、「大きい器量だ、わかいに似合わず、おぬし、なかなか話せるのう――」
興を添える三味線が座にはいった。酔いは撥の音に掻き立てられた。はなやかな振り袖着の童女が舞いおさめて、三線は地唄にあわせて鳴りだした。「こりゃ面白い、こりゃア――」と篠崎彦助は立ちあがった。うっとり誘いこまれて、彼の前には陽気なものだけが跳ねていた。訛りの多い咽喉で土地の唄をうたっているものに合いの手を入れて、席に戻って来た。
「うーふ」
「お父ツぁん」と誰かが云った。
「飲めえ――」と彼は当なくどなるのである。