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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

縁を結んで、義弟とは呼びながら、すべてに、一目置いている阿賀妻との関係に於いて、彼にはどこか一カ所――どうしても解けない結びめがあった。それが何であるかは無論わからなかったが――その解決出来ないものが、彼をこうして不寝の番たらしめている。

そして、凝固するような霜の夜がようやく蒼ざめて来るのだ。

夜が明けた。

老人は朝早く眼ざめた。彼もまた、母屋をはなれた隠居所で、ひと夜のあいだ、落葉の為になやまされたのかも知れない。下働きの女どもが、調子をつけて雨戸を繰っている後に立って彼はほっとしていた。洗ったような朝の空気が家のなかに流れこんだ。そして、屋内は昨日のまま何のみだれもない。なにごとも無かったのだ。

父と息子は炉ばたで朝の茶を飲んだ。

「どうか?」と老人は奥に向って顎をしゃくった。

息子は昨夜の模様を話して聞かせた。

眼ざめた客は、そこだけまだ雨戸の立っているうす暗い奥座敷で、ぎょろッとあたりを見まわした。これは、草に葺かれた自分の小屋ではなかった、と、しばらく考えて、それから独りうなずくのだ。いくど、この錯覚におそわれたことであろう。わけても心が落ちつかず、従って、夢見ることの多かった暁には、そういう模糊とした意識がながかった。