轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
北の方から一足々々南に向いて、あたたかい小春日和を追いかけて来たようなものだ。阿賀妻にとってはこの思いこそ切実なものであった。思えばシップの草小屋を出た朝から、秋の空は晴れあがっていた。蝦夷のオダルの港からは、風波も知らぬ船の旅、それから郷里に寄り、こうして東京にはいるまで、一日も、降られたり吹かれたりしたことは無かった。あまりに恵まれすぎている。
「そうだなア、よいお天気がつづいてくれましたなア――」と阿賀妻は空を見あげた。
「けっこうなことでございました」
「それにしても、江戸の空模様はどうしたものかなア――はは――」と、彼は取ってつけたように笑って云った。「おぬしはどう思う?」
甚助は笠のひさしをあげて乾いた路のあちらに西南の空を見あげるのだ。その色はすき透るような蒼みを帯びていなかった。白っぽくはげていた。それが都会の空気の色ではあったが、田舎から来た甚助には快く晴れているとは云いきれなかった。彼は話を外らした。
「さすがは天朝さまのお旗本でございますなア、にぎやかなことでございましょう」
「それはそうだ」
「ひとつ、お供のかなった思いでに、あれが見たいものでございます、守田座とかいう芝居座のことを、話に聞いておりましたが――」