轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

遂に一人もいなくなると、荒れはてた野のようである。散乱した煙草盆の一つをひきよせて、阿賀妻は一ぷく喫いつけた。

時刻もずいぶん経過していた。

煙が口の中で、物をくぐんだような手ごたえをあたえた。

「ふーん」と彼は独り感心した。これが煙草の味というものであろう――あおい煙が糸をまいているきせるを、指に立てて眺め入るのだ。

のんびりした気持になった。因縁ぶかい徳川家の匂いが、この増上寺には、いたるところに香っている。彼はその中に坐って何か心がなごむのであった。

この煙管を手に入れたのは、思えば、ちょっと、自分に羞かむほど昔のことであった。わかい武士の血が、他方では、見栄に苦労する伊達者としてあらわれていたのだ。むろん、お国の前途は彼ら年輩の青年たちが、そのころ最も心をなやましたことであったのは事実だ。ただその、刀の柄をたたいた談論のなかで、実はこっそり、自分のお家だけはこの理屈以外のところにあると思っていた。お国の模様がえが、家禄没収、族籍剥奪などという手段でなされようとは考えたことも無かった。ずいぶん思いきった革新であっても、話としてのときには身に沁みなかったのだろう。