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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

しかし、彼の家族のものと鉢合せをさせてしまったのだ。

「ご、ごめん――」と彼は忙てていた。

起きあがった。それは殆んど同じ瞬間であった。皆がそうしてぱッと目を醒ましていた。奇妙な音がうわーんと彼らの耳を衝いた。ただ事ならぬものをぴンと感じた。一斉に目を瞠ってまン中の主君をうかがった。彼は刀を杖にして膝立ちになっていた。自分に注がれている家中のものの眼をひしひしと感じて、それにこたえるようにぐるッと見まわしていた。

けたたましい鐘の音があたりをひっかきまわしていた。

つづけざまに蒸笛が鳴った。

乱軍のような跫音が、彼らのま上の甲板に沸き立った。

二三のものがおッ取り刀で、物見のためにそこの段梯子を駈けあがった。

船室には、呼吸の根のとまるような沈黙がおちた。衝撃を受けた一刹那の姿勢で、そのままの表情をして、彼らは硬くなっていた。四ン匐いになった子供も、突発した非常の空気を感じて泣くことも出来なかった。

「アンショウ、アンショウ――」

そう叫んで物見のものが戻って来た。

彼らはぐったりして、顔を見あわせた。

春のおだやかな海で、まだ日もすっかり没してしまわないこの時間に、船は暗礁に乗りあげたというのだ。