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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

晴れた星の夜は、殊にきびしかった。ちかちかと青びかりしている酷いような冷たさであった。濡れていた曠野の雪はあわてて凍結した。かちかちにかたく固く凍えた。深夜にはぴンぴンひび割れた。

雪の原野は巨大な一枚の氷盤に化していた。

その早朝、彼らは氷盤となった固雪の上に立っていた。大野、門田、それから高倉祐吉が連れ立っていた。男たちは背が曲るほどの荷を背負っているのだ。蒲団包みやつづらや唐草模様の風呂敷包みであった。イシカリ役所までは運ばねばならなかった。それから先は官の荷として駅つぎの駄馬に托すことになっていた。

女は子供たちを先に歩かせていた。

聚落のものが送って出た。

丘の外れまで来て、相田清祐は白い呼吸を吐きながら大野らに云った。

「されば、丁度庚午丸の出迎えになるやも知れぬ、――と、折も折り、そういう日取りにはなるが」

何度もしたことだろうに、彼はまた改めて指を折って数えた。

「どうぞ、そうあって下さればよいが」と門田与太郎がつづらを摺りあげた。

女は女どもで長い挨拶を交していた。出て行く一人の女は、見送ってくれる何十人のものに名残りを惜しまねばならぬのであった。