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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
格子天井の中央にある電燈がまぶしい。眼球が痛く、にぶく頭がうずいて、まだ、酔っているようだった。
欄間に下げられた風鈴が鳴っている。外では、雨の音が、蛙の声をまじえて、聞える。
様子がまるでわからないので、夢でも見ているのかと思っていると、
「お目ざめ?」
その声に、びっくりして、ふりかえった。
お京が、坐っている。あおむけになった金五郎の左肩のところにいた。なにをしていたのか、金五郎が、ふりむくと、手に持っていた筆を、かたわらの小机のうえに置いた。下から見あげると、下顎のくくれが一層ゆたかで、白い富士額には、うすく、汗がにじんでいる。
お京は、不思議な微笑をたたえて、
「金五郎さん、起きて、鏡をごらんなさいな」
と、いった。
「鏡?」
奇妙なことをいうと思い、酔いしれて、鉛のように重い上半身を、やっと起した金五郎は、思わず、あッ、と、叫び声が出た。
眉をつりあげ、団栗眼をむいて、正面の大きな鏡台の中を、睨んだ。
いつ裸にされたのか、むきだしになった両腕に、左右とも、絢爛たる彫青がほどこされてある。よく見ると、左腕には、黒雲をかきわけて、天に顔をあげている昇り龍、右腕には、地に鼻先をむけている降り龍、その二匹の龍とも、らんらんときらめく巨大な眼、弾力のある長い鬚、つき立った角、張りのある鱗、焔のような尻尾、朱