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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
そのことが、時次郎は、急に心配になって来た。
「珍しい荷役じゃなあ」
船長も、会社の本船係りも、感心したように、眺めている。
普通、荷物炭荷役の場合には、舷側に、棚は吊らない。雛壇をこしらえて、天狗取り作業をやるのは、焚料炭の場合に限られていた。それを、今日、特に、棚を吊ったのは、敵の裏をかく作戦である。たしかに、燈台沖までも漕ぎだして、危険をかえりみず、棚を吊っておいたおかげで、敵は手出しが出来なかったのである。
荷物炭は、艀から、本船へ、長い歩板をかけ、その上を登り降りして、振りわけにした担い籠で、積みこむのが通常だ。金五郎の苦肉の策にしたがって、今日は、二通りの荷役が、同時に、行われているのだった。これには、人数を多く要するけれども、荷役の能率は倍に近かった。
一千トンもの仕事は、一日では終らず、掛かってから三日目に、ようやく終了した。
この間、妨害に対する警戒が、充分になされていたが、友田喜造からも、ドテラ婆さんからも、平尾角助からも、なんらの不穏な働きかけはなかった。静かなのが、かえって、不気味なくらいである。問題が大きくなりすぎて、警察が干渉して来たためであったかも知れない。