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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
「逃げるんでないぞう。逃げたってわかるぞう」
男は、まだ、そんなことを叫びながら、谷川の岸に来ると、朽ちかけた丸木橋を、あぶなっかしい足どりで渡った。二人のところにやって来た。
「こんなことだろうと思うた。お前、谷口の娘ッ子だな?」
「はい」
「盗んだ葉を出しなさい」
「盗みはしません」
「ちゃんと見とったんだ。そこの笊を出しなさい」
マンはあきらめて、黙って、くぼみから笊をとりだした。
「ほうら、こんなに盗んどる」
「盗んだんじゃありません。落ちていたのを拾うたとです」
「こんなに葉が落ちるわけがあるか。どうもこの辺の奴はたちが悪い。政府を馬鹿にしとる。今度は許さん。処罰してやる。……おい、そっちの娘ッ子、お前もいっしょにやったのとちがうか」
「とんでもない。わたしは草刈りに行った帰りに、通りかかっただけです」
「怪しいな。ま、ええわ。共謀としてひっくくるところだが、特別にこらえてやる。帰れ」
キヌは、籠を背に負うと、一散に走り去った。
「谷口の、わしについて来なさい。お前のお父うに逢うて、ようと調べたうえで、罰金申しつけてやる」
「お役人さん、そればっかりは堪忍して……」