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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

藤本組と縁組みすりゃ、玉井組万々歳じゃ」

「うちの人も、あたしも、まるきりの無学文盲、それで、一生辛い目を見ましたけ、子供たちには、どんなに貧乏してでも、学問だけはさせてやろうと思うたとですが、……そうすれば、そうしたで、子供たちは、親の膝元を離れるようになりはせんかと、……」

「むずかしいもんたい。じゃが、あんまり考えすぎても、物事はうまく行かん。まあ、今度の縁談については、そう、クヨクヨしなんな。勝則も、まさか、わたしたちの顔をつぶすようなことはしやすまい」

大庭邸のある、牧山への上り口のところに来て、二人は別れた。別れ際に、大庭春吉は、「明日の晩にでも、勝則を、家に、遊びに寄越しなさい」と、いった。大庭は、勝則が自分の孫のように、可愛ゆくてならぬ様子だった。

マンは、一人で、渡船場の方へ歩きながら、まだ不安が去らず、これから、原田雲井のところへ寄って、この問題について、智慧を借りよう、と思った。

渡船に、乗った。五〇トンほどのずんぐりした恰好の小蒸気船である。戸畑と若松とをつなぎ、五分足らず、渡船賃三銭、十分置き、中ノ島の両側に添って、出入港船の頻繁な洞海湾の港口を横断している。