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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
父のようには、うまくひろがらない。瓢箪形の歪になって、網は沈んだ。
「まだ、下手じゃなあ」
櫓を押しながら、金五郎は笑った。
ビリビリッと手ごたえがあった。しかし、網をしぼって引きあげようとしたのに、どうしても上らない。海底の岩かなにかに引っかかってしまった。無理に引っぱって、網を破った。
「ちょっと待て」
金五郎が、網のところへやって来た。
勝則は、櫓に代った。
船を移動させて、根気よく、すこしずつ、網をあげた。方々が破れている。
「なにか入っとったらしいが、逃げてしもうたわい」
そういいながら、やっと、ぼろぼろになった網を引きあげた金五郎は、
「ウワア、大けなスズキが掛かっちょるど」
と頓狂に叫んだ。
一暴れしたとき、岩に、鼻でもぶっつけて気絶したのか、二尺以上もあるスズキが、破れ網に包まれて、おとなしく上って来た。月光に、鱗が美しく光る。
「怪我の功名じゃなあ」
金五郎が、そういって笑ったとき、背後に、エンジンの音が聞えた。水上警察署の白いモーター・ボートが近づいて来た。伝馬船のところに来て止まった。
若い一人の巡査が、姿をあらわした。威丈高に、
「おいこら、鑑札を持っとるか」