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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
彼女は智能の程度も、小学三年生並であった。
ところが、それも、束の間であった。ヤスと、金五郎との間に、奇妙な争闘が展開された。それは、はじめは、閨房の中から、はじまった。
金五郎は、いつも、一人で寝て、絶対に、ヤスを相手にしないのである。いくら、ヤスが要求しても、応じない。
ヤスは、泣きだす。
「金さん、あんた、どがいなわけで、わたしを可愛がって、おくれでないのぞな?」
「おれは、養子には来たが、あんたの婿に来たんじゃない」
「養子に来れば、わたしが嫁にきまっとるじゃないけ?」
「養子に行くことは約束したが、あんたの婿になることは約束しとらん」
「ははあ、……」ヤスは、怒りと猜疑心とにあふれた眼つきで、「あんたも、財産目あてで来たんじゃな?」
「とんでもない。おれは、財産なんか、鐚一文欲しゅうはないよ」
「そんなら、なんで、来た?」
「だから、養子の約束したけに、養子に来たというとるじゃないけ」
二人の話は、水かけ論で、埒があかない。
ヤスは、我慢しきれなくなって、金五郎に飛びかかる。大女の怪力で、油断していた金五郎は抱きすくめられる。おさえつけられる。ヤスの身体は、火のようだ。