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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
金五郎は、やっと、情炎に狂う女をつき放して、表に逃げだす。
そんなことが、毎夜であった。
金五郎は、家を外にするようになった。道後温泉に行くと、三日も四日も、帰って来ない。
酔っぱらって、警察の厄介になったことも、数度あった。
自然の順序として、金五郎の放埒は、村の評判になる。
養子縁組の仲介役をつとめた村長が、金五郎を呼びつけた。
「金さん、目にあまるぞな。お前、どないなわけで、そがいな無茶するんじゃ?」
「どがいも、こがいも、家に居ったら、ヤスに殺されるけに」
まったく、醜女で、白痴で、大女のヤスが、らんらんと眼を光らせて、挑んで来る姿を想像すると、金五郎は、慄然として、頽廃的な気持にならずには居られなかった。黒石家は、黒縄地獄である。
「金さん、お前、道後に、いいかわした女でもあるとじゃないけ?」
「そんなものは、ありません」
「わしには、打ちあけてくれんかい。黒石でも――もう仕方がない。ヤスを嫁としてあつこうてくれりゃ、その女を請けだして、メカケとして、ちゃんと、おさまらせる、というとるけに……」
「ほんとに、そんなものは、ないです」
それからも、金五郎の乱行は高じるばかりであったので、遂に、四月になって、正式に離縁された。