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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

それでも、賃銀は定められたとおり。不公平やわ」

「そんなこと、いうたって、通りゃせん」

「それが、はがいいのよ。まちがったことでもなんでも、そのまま平気で押し通す――それが、男の権利なの?」

「権利ちゅうわけでもないが……」

「権利と思うとるのね。親方さんだっても、そうやわ。ちゃんとごりょんさんがあんなさるとに、オメカケさんを囲うて、さっきも、人力で乗りこみなさる。メカケの一人二人持つのは、男の甲斐性というて、メカケを持たぬ者が、かえって、馬鹿にされる。そんなことが、当りまえみたいに通るのは、まちがいよ」

「まちがいというてみても、世の中のことはなあ……」

「ふウン、兄さんも、金でもできたら、二号を持ちたい口ね」

「馬鹿なこと、いうな」

林助は、妹の鋭鋒が自分にむいて来たので、うろたえた。

「どうかしらん?……兄さんが、義姉さんをいつもいじめて、毎日、打っとるの、あたし、腹が立ってたまらんわ。義姉さんも義姉さん、それが当りまえみたいに、ただ、メソメソ泣いて、あやまっとるのだもん。あたしなら、承知せんのじゃけど……」

「お前のような女を女房にした男は、命がけじゃのう」