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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

「そうか、そんなら、今度逢うたとき、よう礼をいうとこう」

金五郎は、仕方なしに、そう答えた。けれども、実際は、このことを、新之助のように、手ばなしでよろこぶ気持には、どうしてもならなかった。それどころか、「チーハー」の島崎勇次と、森新之助との結びつきに、いいようもないはげしい不安が湧く。

新之助の方は、金五郎の気持などには頓着なく、終始、にこにこしている。焼ける前に比して数等立派な、日若座落成の日のことを考えると、楽しくてたまらぬらしい。しかし、やっと、金五郎が、先刻から、あまり晴れ晴れしていない様子に気づいて、

「金さん、大層、元気がないごとあるが、……やっぱり、争議がうまく行かんかね」

「うん、どうもなあ」

「むずかしいもんじゃのう」

「今日も、会見はお流れじゃ。肝腎の先方は、責任者が旅行中とかいうことで、話にならん。この争議がはじまってから、関係者が、よう旅行したり、病気したりする。まるで、一人角力を取っちょるようじゃ。……あんまり、気が腐るけ、「六ゾロ」にでも寄って、源公と一杯やろうかと思うて、行きよった」

「労働組合が出来ても、うまい具合には行かんとみえるな」