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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

「勝則が、やっと、仲仕の組合を作って、いろいろやっとるけんど、……資本家というものは、なかなかなあ。……それに、例の友田喜造が、……」

「そういえば、勝則君が、労働組合で、東京の、なんとかいう劇団を招ぶとかいいよったが、今度はおれの劇場は間に合わんわい。そう、いうちょいてくれんか」

「それは、知っとるじゃろ。……そんなら、また」

金五郎は、そこを離れた。

歩きながら、唇を噛んで、

(おれは、力が足らん)と、情なかった。

夕刻、玄関を入ると、足音を聞いて、マンが、待ちかまえていたように、飛びだして来た。

「どうでしたの?」

「今日も、駄目じゃ」

「ほんとに、はがいいのね」

マンは、歯ぎしりをするようないいかたをした。

「勝則は?」

「一ぺん帰って、御飯を食べてから、また出て行ったけど、……」

「組合の集合じゃろ。毎晩のごと、やっとる。……危いけ、夜は気をつけるごと、よういうてはあるが、……」

その夜、寝る前に、毎日の習慣の日記をつけたが、一段と肉太い字で、

「実ニ、実ニ、腹ガ立ツ」

と書いたきり、後を続ける気持が起らなかった。

(一体、どうすれば、よいのか?)

的確な行動の手段が、頭に浮かんで来ないのである。