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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

「動物なら、なんでも、好きですのよ」

「猫、何匹になった?」

「八匹。でも、ミイが、また、腹が太いですけ、近いうち、三匹ほど増えますわ」

「ウフフ……」チヱは、妙にさびしげな含み笑いをして、「増えるのは、子供だけね。猫も、人間も。……家、これから生まれる猫の子も、人間の子も入れたら、十七人の大家族よ」

「ミイの腹、この前より、ずっと大きいようにあるけ、五匹くらい、産みはせんかしらん?」

「あたしも、双生児かも知れないんだって……」

「まあ」

二人は、顔見あわせたが、どちらも、今度は笑わなかった。

奇妙な沈黙が、流れた。

「義姉さん」

マンの表情は、真剣になっていた。

「なあに?」

「あたし、不思議でたまらんことがあるんだけど……」

「どんなこと?」

「こんなこと、いうの、ごめんなさい。……ねえさんたち夫婦のことです」

「不思議なこと、って?」

「あたし、広島から出て来て、ずっと世話になっとって、こんなこというと、怒られるかも知れんけど、……兄さんと、ねえさん、毎日のように、喧嘩して、……それも、いつも、あんなにはげしい夫婦喧嘩しとるのに、……どうして、別れんで居るんじゃろうか、と……?」