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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
そうして宣教師がこのような仕事を成し遂げたについては、近い過去にヨーロッパに起った大事件が、即ち宗教改革が、響いているのである。
宗教改革の運動は大分前からヨーロッパで燻っていたが、それが焔となって燃え上ったのは一五一七年であった。それはインド洋においてアルメイダやアルブケルケの事業がすでに終った後である。ヨーロッパがこの改革によって混乱に陥ると共に、ポルトガルの植民地攻略の仕事も一時その活力を失ったように見える。しかし新教の攻勢によって深刻な反省を促されたカトリックの世界においては、さまざまな腐敗の粛清、宣教師の生活の浄化などによって、反撃に出る傾向が激成されて来た。中でも著しいのは、一五三四年にイグナチウス・ロヨラによって創設せられたヤソ会である。それが法皇に承認せられたのは一五四○年であった。即ちポルトガルの植民地政略の勢の止まった時とほぼ同時なのである。
ところでこのヤソ会は、清貧・貞潔・服従などの中世的戒律を厳格に守り、自己及び同胞の魂を救うために身命を捧げて戦う軍隊であった。従ってそれは内面化された十字軍であるということも出来る。ローマの教会が宗教改革によって失った権威を、何とかして回復しようということも、この十字軍の目ざすところであった。