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さこく

鎖国

和辻 哲郎

日本の悲劇

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页

青空文庫

この漂着の事件は種々異なって伝えられているが、その船がシナのジャンクであり、乗っていたポルトガル人が二人乃至三人に過ぎなかったことは、動かぬところであるらしい。即ちポルトガルの「船」が日本を目ざして来たのではなく、船から遊離した冒険的なポルトガル人が、偶然、日本に接触したのであった。

しかしこの偶然の事件の背後には、日本人にとって一世紀以来馴染の多いシナ沿岸へ、ポルトガル人が進出して来たという事実がある。それはマラッカ征服後一五一四年に、シナへの使者をシナ人のジャンクに乗せて送ったことに始まる。ついで一五一六年には、ポルトガル船四隻、マレー船四隻の船団を以て、初めて広東附近タマオまで進出した。広東の知事が皇帝へ伺いを立てている間に、船団の中の一隻はレキア(琉球)探検に派遣されたが、しかしこの船は台湾対岸の※(「さんずい+章」、第3水準1-87-8)州まで来ただけであった。その中に南京からポルトガル人の宮廷訪問の許可が到着した。そこで一五二〇年の初めに、司令官は、福建南端から陸路南京に向った。謁見は一五二一年に至って漸く行われた。しかるに右の船団に続いて一五一九年にやって来た第二の船団の司令官は、タマオに要塞を築いたり、子供を誘拐したりなどして問題を起した。