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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
その後ポルトガルに移り、一四八二年以後に、ギネア海岸へ航海したこともある。その内リスボンで結婚したが、その妻の父が遺して置いた海図や書類から彼は色々なことを学んだらしい。
当時は航海者ヘンリの歿後二十年も経って居り、ポルトガルの海員たちの間の発見熱は大変なものであった。だから西方の海の秘密についての色々な噂もかなり行われていたのである。例えばポルトガルの船長マルチン・ヴィセンテは、サン・ヴィセンテ岬の西方四百五十レガのところで彫刻のある材木を拾った。これは幾日も幾日も吹き続いた西風に流されて来たのであるから、西方のあまり遠くないところに陸があるに相違ないということが云える。またアゾレス諸島にはその地に存しない樅の幹や、インドに於てのみ育ち得るような太い蘆が漂着した。或はまたマデイラのアントニオ・レーメは百哩ほど西方に三つの島を見たと語った。等々の類である。
コロンブスはこれらの話を自ら聞いたほかになお当時の海図からも同じような示唆を受けている。当時の海図は航海者の錯覚に基くようなものを書き入れているのであって、アンティリア島の如きがそれである。この名は後に彼の発見した西インドの群島の名として生き残っている。