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さこく

鎖国

和辻 哲郎

日本の悲劇

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页

青空文庫

である。この傾向は既に前からスペイン人の探検に現われていたのであるが、しかしその相手が大きい組織を持たない断片的な部族であった間は、まだ人を瞠目せしめるほどの事件は起さなかった。然るにメキシコとペルーとで起ったことは、新しい世界に於て最も発達していた二つの国家に関することなのである。従ってこれらの事件は、「発明や発見のお蔭で、文明人と野蛮人との区別が、神と人との間の相違の如く著明になった」と云われる所以を示しているのである。

両者の内では、北の方が一歩先であった。元来キュバとユカタン半島とは百哩あまりしか離れて居らず、しかもユカタンの附近まではコロンブスが二度も行っているのであるが、いつももう一息のところで反転したのであった。だから南の方ダリエン湾を中心とした探検活動が、北の方キュバを中心として動くようにさえなれば、ユカタンに触れることは易々たるものであったのである。そうしてその機運を作ったのは、恐らくバルボアたちの新発見の刺戟であろう。

バルボアがエンシソの船で地峡方面へ入り込んだのは一五一〇年であるが、その翌一五一一年に、ディエゴ・ベラスケスがキュバ総督として赴任して来た。