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さこく

鎖国

和辻 哲郎

日本の悲劇

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页

青空文庫

それはサンタ・クルスと名づけられた土地での貴婦人の款待である。ピサロは帰り途にも寄ると約束したが、帰路その村の沖に投錨すると、すぐに貴婦人は伴をつれて船を訪ねて来た。そうしてピサロたちをその邸に招待した。翌日ピサロが訪ねて行くと、匂の高い花で飾った緑の枝の四阿が出来ていて、その中にペルー料理がどっさり並んで居り、名も知らぬ果物や野菜もうまそうに盛ってあった。食事の後には若い男女の音楽と踊りが催され、しなやかな肢体の優美さ敏活さを見せてくれた。最後にピサロはこの親切な女主人に自分がこの国へ来た動機を述べ、携えて来たスペインの国旗をひろげて、スペイン王への臣事の記念にこれを掲げてくれ、と云った。女主人たちはこの国旗掲揚の意味が十分に解らなかったと見え、至極上機嫌で、笑いながら旗を掲げた。ピサロはこの形式的な征服に満足して船に引き上げた、というのである。

ピサロはこの南方の黄金帝国の確証をもたらして、十八カ月目にパナマに帰った。その与えたセンセーションは実に大きかった。彼らはもはや夢想家でも狂人でもないのである。しかし総督はこの期に及んでもなおこの発見の意義を理解せず、今後の保護を拒んだ。