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さこく

鎖国

和辻 哲郎

日本の悲劇

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页

青空文庫

道路についで驚くべきは水道である。沿岸地方には殆んど雨がなく、川は少くて急流であるから、広い地面を湿おすことが出来ない。従って土地は乾いて不毛であるが、灌漑さえすれば豊沃の地となるところも多い。そういうところへ運河と地下水道とによって水が引かれているのである。それらは大きい石の板をセメントなしでぴったり接合したもので、所々の水門により必要なだけの水量を供給して行く。時には非常に長く、四五百哩に達するものもある。水源は高地の湖とか山中の水で、それを導き下すに際し、岩に穴をあけ、山に隧道を掘り、或は山を廻り、河や沼を越えている。即ち工事は道路の場合と同じに困難なのである。この大工事はスペインの征服以後荒廃に帰したが、しかし所々になお灌漑を続けているものもある。しかしその水が何処の水源からどういう径路を経て来ているかは、大抵不明である。従って水道構築に於けるインカ人の天才と努力とは未だその全貌を示しているとは云えないのである。

水道による灌漑は乾燥地の農耕をも可能にしたが、更にペルー人は段畑の構築によって山や丘をも耕地に化した。勾配の急な山を段々に刻んで山頂までも畑にするのである。