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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
てよいことなどを述べた。
翌日から町の清掃とか、インカの財宝の処分とかが始まった。以前のインカの幕営地に派遣された三十騎の一隊は、インカの后妃たち、附人たちなど多数の男女を率いて帰って来た。ピサロはその或る者を家に帰し、或る者をスペイン人たちの召使として残した。また同じ地のインカの別荘からは豊富な金銀器や宝石がもたらされた。死んだ貴族たちの体からも多くの装飾品が得られた。町の倉庫には木綿や羊毛の織物が堆積していた。
間もなくアタワルパは、スペイン人たちが好んで語っている宗教的熱心の裏に、もっと強い欲望の動いていることを看破した。それは黄金に対する欲望であった。彼はここに血路を見出そうとした。ぐずぐずしていると、監禁中の兄ワスカルが出て来てインカの位を回復するであろう。だから一刻も早く自由を得なくてはならぬ。で彼はピサロに、もし釈放してくれるならばこの室の床を黄金で埋めようと提案した。人々はそれをきいて信用し兼ねる笑を洩らした。インカは焦って、床を埋めるだけでない、手の届く限りの高さまで金で一杯にしようと云って、背伸びして壁に手をのばした。ピサロは熟慮の末この提案を承諾し、インカの示した高さに赤い線をひいた。