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さこく

鎖国

和辻 哲郎

日本の悲劇

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页

青空文庫

それが船員の間に不平を呼び起し、それに乗じて前述の争が遂に勃発したのである。

謀叛の起ったのは四月一日の夜であった。中型船コンセプションの船長が先ず拘禁中の前述の船長を解放し、この拘禁船長が頭となって、もとの自分の船サン・アントニオの新船長を襲い、この船を奪回したのである。中型のヴィクトリアもこれに味方した。で翌朝にはマガリャンス方二隻、謀叛船三隻の形勢となった。マガリャンスは船長たちを召集したが、逆に向うからサン・アントニオへ来て貰いたいという返事を受けた。そこへ謀叛者たちが集まっていたのである。マガリャンスは隙を見て腹心のものをヴィクトリアに派し、船長を殺して船を奪回せしめた。次でその夜、サン・アントニオが錨綱を離れて流されて来た機会を捕え、いきなり大砲を打ちかけてこの大型船の中へ兵隊を突撃せしめた。謀叛船長たちは皆捕縛された。特にコンセプションの船長は斬罪に処せられた。こういう騒ぎが、目ざす海峡に僅か二百海里のところで演ぜられたのである。

マガリャンスはその後、この海峡に近いところで五カ月の間冬籠りした。南緯七五度まで行ってなお海峡が見つからなければ引返そうというのが彼の主張であったから、まだまだ高緯度の寒い地方へ深く突入する覚悟で、じっくり腰を落ちつかせていたのである。