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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
の強い関心を刺戟せざるを得ないのである。
先ず初めに倭寇や海外貿易の現象を取り上げて見よう。
倭寇は、高麗史によると、一三五〇年庚寅の年から急激に盛んになっているそうである。これは蒙古襲来から七十年ほど後のことであって、蒙古人の刺戟が直ちにひき起した現象とは見えない。しかし間接にはその間に聯関があるであろう。蒙古軍に対する防衛戦争は武士階級に著しい貧困をもたらし、遂に半世紀の後に鎌倉幕府を崩壊せしめた。そのあとには伝統的な武士の秩序が回復されず、実力の競争としての内乱が打ち続いた。そのための産業の破壊や生活の困難が、倭寇を押し出したらしいのである。特に倭寇として進出したのが北九州や瀬戸内海沿岸の「あぶれ者」どもであって、蒙古人の襲来の直接の印象をうけた地方に多いことは、倭寇と蒙古襲来との聯関を示唆するものといってよかろう。しかし何故に一三五〇年という特定の年から急激な進出がはじまったかは、今のところ知る由がない。それはシナにおいて蒙古人の支配が崩壊した一三六八年よりは少しく前であるが、しかし初めは主として高麗朝末期の朝鮮に向い、崩壊に瀕した元王朝の勢力とはあまり接触しなかった。