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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
これは倭寇が日本にとって公のものでないということの承認であると共に、日本の国家の統一が十分でないことの告白でもあった。その後間もなく新興の明の太祖が、倭寇に対する威圧的な抗議を送って来たときには、それを受けたのは、九州にあってなお南朝の勢力を保持していた征西将軍懐良親王であって、日本の統一的な政府ではなかった。その事情を漸く理解し始めた明は、頻々たる倭寇の侵掠の続く間にも日本との貿易関係を絶たず、機会ある毎に倭寇の禁圧と公式の貿易関係の設定とを申入れているのである。
この公式の貿易関係は、明の太祖にとっては、明の正朔を奉じ入貢の形を取ることであった。貢の物資に対しては、それ以上の物資が明の皇帝の賜与として償われるのであるが、その貿易としての実質よりも入貢の名目が重んぜられたのである。勿論この贈答に附随して、船に満載した物資の貿易が行われる。そのための貿易商人も同乗している。また使節船以外に公認の貿易船が出かけて行くことも出来る。貿易としてはこの方が主要事なのであるが、しかしその貿易を公式のものたらしめるためには、右の如き名目が必要だったのである。