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さこく

鎖国

和辻 哲郎

日本の悲劇

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页

青空文庫

彼らは前途の見透しについて非常に楽観的であった。二年の後には日本全国の諸大学においてキリスト教が説かれている筈であった。しかしそれは彼らが当時の日本の政治的情勢について殆んど無知であったことをも示すものであろう。三好長慶を中心とした京都地方の戦乱の様子は、鹿児島でははっきり解らなかったかも知れない。従って仏僧たちもその点についての説明は出来なかったかも知れない。しかしとにかく全国的な秩序が失われていて、日本国王との直接談判などが思いもよらぬことであったという事情は、鹿児島人には解っていたであろう。シャビエルたちは少しく日本語が解るようになると共に、最初の予想を裏切るいろいろなことに気づきはじめたらしい。五カ月後にミヤコへの船を与えようと約束していた島津氏は、ミヤコが戦乱の巷である故にその静まるのを待てと云い出した。鹿児島での伝道も最初の予想ほどには伸びなかった。これは鹿児島が、鎌倉時代以来の武家の伝統的な権威を、この下剋上の時代においても遂に覆滅させることのなかった稀有な地方であることと、何らかつながりがあるであろう。ヤジローに飜訳させた教義書には仏教排撃の議論をも書き込んだが、キリスト教の「神」