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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
国王の宮殿も、神父が非常に骨折って一年前に建築を完成した会堂も、火を免れることは出来なかった。」(同上ヌネス書簡)トルレスやフェルナンデスが多年の艱難を忍びつつ築き上げたものは、三四時間の間に悉く失われた。領主や大身などの家臣であった信者たちも、諸方へ散り散りになってしまった。
やがて敵兵が来襲するだろうとの知らせに、信者が数人集まって、トルレスやフェルナンデスの身の上を相談したが、その結果は騒ぎが静まるまで山口にはいない方がよい、ということであった。火災後二三十日を経て、敵はいよいよ山口の町へ一里ほどの所まで迫って来た。信者たちは頻りにトルレスたちの退去をすすめた。トルレスも遂に、乱後には帰ってくるというつもりで、退去を決意した。信者たちは集まって別れを悲しみ、出発の日にも町から二三里のところまで送って来たが、まるで死別れででもあるかのように、男も女も少年も皆泣いた。トルレスも涙を抑えることが出来ず、激しい悲痛と愛情とを表わして別れた。こうして豊後へついたのは五月であったが、悲しみと愛情とのために遂に病気になり、七月のヌネスたちが到着した時にはまだ癒っていなかった。