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さこく

鎖国

和辻 哲郎

日本の悲劇

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页

青空文庫

クリスマスの後、一五六三年になってからは、ビレラは福音書のことを説教して、信者たちの信仰を進めて行った。それはイエス・キリストの生涯を説いて復活祭の準備をすることでもあった。こうして信者たちの信仰はますます固められて行ったが、新らしい改宗者はあまりなかった。外から説教を聞きにくるものも初めのように多くなかった。京都で最初の四旬節が営まれる頃には、それが全然なくなった。ビレラは近郊の村々を説教して廻り、漸く数人の改宗者を得たという程度であった。しかし信者たちは熱心に聖餐を受けることを望み、復活祭の週の木曜日即ち主の晩餐の日には三十余人の信者が聖餐を受けた。復活祭の当日には九人の受洗者があった。その中には一人の高僧も混っていた。

京都の教会はこうして地味に育って行ったが、復活祭のあとでまた戦争が起り、僧兵の動きが激しくなったので、ビレラは信者たちと協議の上、また堺の町に移った。丁度そこへ奈良から結城山城守の招請が来たのである。ビレラはこの「キリスト教の敵」の招請に幾分の疑を抱いたが、しかし死を賭してもそこに行こうと決心した。それは一五六三年の四月の末であった。